日本人朝鮮画アーティスト
金聖蘭は、日本の関西で生まれ育った在日コリアン三世のアーティスト。(ここで「在日コリアン」とは、大日本帝国による第二次世界大戦中の朝鮮植民地支配を起源とする、朝鮮民族にルーツを持つ日本在住者のことを指す。)金の作品は主に朝鮮画と呼ばれる、画仙紙に描かれた水墨画から成る。朝鮮画は北朝鮮 における主な芸術形式であり、社会主義リアリズムの主要な媒体である。
金は幼少期より絵を描くことや彫刻を作ることを好み、幼い頃の美術教師たちから影響を受けた。十代になると、自分のルーツである朝鮮半島について学び、自身が何者であるか、また日本での生活について熟考を重ねた。独学で朝鮮半島の歴史を学び、大韓民国における民主化闘争を描いた作品を制作した。東京にある朝鮮大学校で学んで以降は、在日コリアンのための小中学校で教鞭を執る。金聖蘭の美術の授業では、生徒たちに民族的・文化的アイデンティティについて考えさせ、文化的アイデンティティを肯定的にとらえるよう促す。教職のかたわら、北朝鮮にある高句麗古墳群(2004年ユネスコ世界遺産登録)の研究を続け、制作にも影響を与える。作品では、題材のみならず(伝統的な水墨画を選ぶといった)素材の面においても朝鮮民族のルーツを示す。例として《出合いII》や、2021年の極美展で審査委員賞を受賞した《自問自答I・II》(1994年)等が挙げられる。
金聖蘭は在日朝鮮学校で美術を専門に教育を行っている。同時に、「南北コリアと日本のともだち展」に参加・支援する人たちとも人脈を築き、継続している。2001年に始まったこのプロジェクトは、日本、中華人民共和国、大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国に住む子どもたちの作品を展示する。現地で制作された作品が集められ、毎年各国で展示される。《等身大の自画像》(2005-2015年)、《大きくそだて平和の木》(2009年)、《空にとどけるみんなのねがい》(2021年)など、長年にわたり子どもたちと多くの作品を共同制作してきた。彼女の活動に賛同する人は多く、数多くのアーティスト、イラストレーター、ジャーナリストが定期的に展覧会へ参加している。
金聖蘭は、東京で開催されたグループ展「パラムピッ」(1994年)にも参加している。朝鮮で「パラム」は「風」、「ピッ」は「明るい光」を意味する。展覧会のタイトルには、変化の風を体験し、人生に新たな光を得たいというコリアン女性アーティストの願いが込められている。在日コリアン女性アーティストである尹光子(1935年-)によって結成されたこのグループは、メンバーが互いに支え合うことで制作や仕事、子育てを行えることを目的としている。金聖蘭は設立当初から中心となって活動してきたこの展覧会は、現在では50人以上の女性参加者が活躍している。2019年には東京で展覧会を開催し、コリアン女性の権利を尊重する社会への切望を表現した作品を制作した。
TEAM: TEACHING, E-LEARNING, AGENCY, MENTORING