日本人マルチメディア・アーティスト
今日の国際的な美術界で主要な人物である森万里子は、1986-1988年の間、服飾デザインを学ぶ傍ら、モデルとしてのキャリアを歩んだ。1988年には、チェルシー芸術大学で学ぶためにロンドンに居住し、1992-1993年にニューヨークのホイットニー・アメリカ美術館での教育課程を修了する。初期の頃から森の作品は、写真、ビデオ、パフォーマンスを用いて、調和のとれた方法で総括しながら、東洋と西洋の二元性を文節化する。SF、ポップアート、モード、アニメーションの世界観を借用した舞台に森自身が出演し、その活動期間中にも発展し続けるテクノロジーの技法を取り入れる。モード写真にインスパイアされた初期作には、漫画のヒロインや艶やかなサイボーグに仮装した森が東京各所で迷っている姿を捉えた《サブウェイ》(1994年)がある。《ティー・ セレモニー》(1995年)と《プレイ・ウィズ・ミー》(1995年)では、日本社会での女性の二次的な立場と男性優位主義を巧妙に明らかにした。
1996年から、様々なメディアを綿密に組み合わせて一つの作品として構成するために、デジタル写真とヴィデオを使い始める。東京の空港で撮影された《巫女の祈り》(1996年)という映像作品は、サイバネティックスな雰囲気を帯びている。この作品で、森は未来的な女神の衣装を着用し、透明の球体で未来を読み、神道や仏教といった日本の伝統と融合させた自身の未来の精神世界の有り様を予言する。以降、1997年のヴェネチア・ビエンナーレで優秀賞を受賞した3Dの涅槃の映像作品《ニルヴァーナ》 など、高度なテクノロジーとシャーマニズムを交差させ、神秘主義と無時的な現実世界が融合した光景を作り上げる。インスタレーション作品《Beginning of the End: Past, Present, Future》(1995-2005)では、13枚の360度のパノラマ写真で構成され、地球の象徴的な様々な場所で、透明のカプセルの内部に横たわり瞑想をする作家自身が登場している。多くの人々にとって、紛れもなくその世代のアイコンとなった森は、1990年代から世界各地で作品を発表し、それらの多くが重要な機関に収蔵されている。